※本記事には『九龍ジェネリックロマンス』アニメ第2話のネタバレが含まれます。未視聴の方はご注意ください。
第2話では、令子の「記憶喪失」という事実が浮かび上がり、物語は一気に深い謎へと踏み込んでいきます。
写真に映るもうひとりの自分。工藤の過去に存在した先輩・鯨井令子。
そして、蛇沼総合メディカル中心で語られる、「あなたのシワには歴史がない」という言葉──。
ここから、私たちは「この世界」そのものに対する違和感を、徐々に意識させられることになるのです。
この記事では、アニメ第2話の見どころを4つのポイントに分けて、私自身の視点でじっくりと振り返っていきます。
※1:筆者は原作未読です。
※2:以下で使用される台詞、画像の引用元は「© 眉月じゅん/集英社・「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会」である。長いので「© 眉月じゅん/集英社」と短くしています。
見どころ1:謎めく「写真」と令子の記憶喪失発覚
第2話冒頭、令子は楊明(ヨウメイ)と出会います。
初対面にもかかわらず、彼女に工藤との写真を見せ、悩みを打ち明けた令子。その行動には、写真に対する驚きと、誰かに頼りたいという切実な思いがにじんでいました。
- 普通なら、初対面でプライベートな相談はしない
- それだけ、令子にとって写真の衝撃が大きかった
- どうしても誰かに話を聞いてほしかった
楊明はそんな令子の気持ちを受け止め、過去の自分についても語り始めます。
「全身整形をして、過去を捨てた」と告白した楊明は、「どれが私で、私じゃないかは私が決める」と優しく励ましました。
楊明「どれが私で、私じゃないかは私が決める」
令子に励ましの言葉を送る楊明
© 眉月じゅん/集英社
この言葉には、詳細は違えど、同じ「過去を持たない者」として令子を肯定したいという思いが感じられます。
これまでも令子には記憶がなかったはずですが、本人がそれを深く考えたことはありませんでした。
それが、今回初めて自覚に至った──ここに大きな謎があると私は感じます。

なぜ、今になって?なぜ、このタイミングで?
ふと浮かぶのは、「ジェネリックテラ」という存在です。人間の記憶をバックアップするという技術が実用化されているこの世界。
もしもこのシステムに何らかの影響を受けているとすれば、令子の「忘れている」のではなく「最初からない」記憶も説明がつくのかもしれません。
見どころ2:工藤の過去回想──もうひとりの「鯨井令子」との思い出
第2話では、工藤発の視点から、過去の九龍で出会った「先輩・鯨井令子」との回想が描かれました。
工藤にとって初めての九龍支店、そこに現れたのは、今の令子と瓜二つの女性──しかし、口調や雰囲気は大人びたものでした。
工藤の回想シーンで出てくる。2歳年上の先輩「鯨井令子」
© 眉月じゅん/集英社
- 第1話で工藤が後輩令子にキスしてしまったのも、先輩令子の口調に似ていたからだとわかる
- 現在の工藤の考え方は、先輩令子からの受け売りが多い
先輩令子は「九龍に恋をしている」と語ります。九龍の雑多で不便な街並みにも、なぜか愛着を感じる。それは確かに美しい感情ですが、私はそこに少し怖さや儚さも感じました。

なぜなら、この世に「変わらないもの」など存在しないから。
さらに注目すべきは、過去回想の空にジェネリックテラが存在していなかったことです。
少なくとも、工藤が30歳だった4年前にはあの巨大な建築物はなかった。それが今では空に浮かび、当然のものとして存在している──この世界が本当に「地続き」なのか、私は違和感を覚えました。
そしてもう一つ。今の工藤の価値観や、馴染みの店。すべては、先輩令子の影響だったのだとわかります。
好きなものも、生き方も、九龍への想いも──あの出会いが、工藤という人間を形作っていたのです。
見どころ3:令子の「変化」と、工藤とのすれ違い
令子は、工藤に見てもらいたいという一心で、耳元に鯨井Bと似たイヤリングをつけて出社しました。
工藤がかつて好意を抱いていたであろう女性──先輩・鯨井令子に、少しでも近づきたい。そんな想いが伝わってきます。
- 本人も「これが正しいやり方ではない」と分かっていた
- だからこそ、そばにいた楊明も一度止めようとした
- それでも、令子は行動してしまった
しかし、その小さな勇気は裏目に出ます。イヤリングを見た工藤は、怒りを露わにし、席を立ってしまいました。
工藤の怒った顔にショックを受ける令子
© 眉月じゅん/集英社
おそらく工藤にとって、あのイヤリングは「過去の痛み」を呼び覚ますものだったのでしょう。私はここで、工藤と先輩令子の間には、何か辛い出来事があったのではないかと予感しました。

好きな人に見てもらいたかっただけなのに…。それが、怒った顔だったら、悲しいに決まっています
夜、令子は楊明の部屋で涙をこぼします。
イヤリングを落としながら、「こんなことがしたかったわけじゃない」と悔やむ姿には、胸を締めつけられる思いでした。
さらに重要なのは、工藤が単にイヤリングに怒ったのではなく、「後輩の令子が、先輩令子の存在を知っている」前提で怒っていたことです。(工藤は写真が消えていることは把握していたので)
- 工藤は写真を勝手に見たことは怒っていないと思う。
- しかし、先輩令子と同じ格好をしていたことに、怒ったように見えた。
だからこそ、ピアス(イヤリング)という小さな違いにも、強く反応してしまった──そんな繊細な機微が、このシーンには込められていると感じました。
見どころ4:蛇沼先生との出会い──「あなたのシワには歴史がない」衝撃の診断
第2話終盤、令子は美容と健康の複合施設「蛇沼総合メディカル中心」で、蛇沼みゆき先生のカウンセリングを受けることになります。ここで、令子は思いもよらない言葉を聞かされるのです。
蛇沼みゆき「あなたのシワには歴史がない」「失った記憶。初めから存在しないのかもしれません」
© 眉月じゅん/集英社
これらの言葉を受け、私は令子が感じたであろう恐怖と不安を強く想像しました。
もしかして令子は──「誰かに作られた存在」なのかもしれない。

クローン?でも普通のクローンなら、成長過程があるはず…。いきなり今の姿で存在するなんて、ありえるのか?
蛇沼先生の態度も、異様さに拍車をかけます。
満面の笑みを浮かべながら、「肌艶も手触りも体温もある」と確認する蛇沼。
これが意味するのは、逆に言えば──この世界には「それらが存在しない者」もいるということではないでしょうか。
さらに、蛇沼先生はただの医師ではないと私は感じました。
マッドサイエンティストのような雰囲気を漂わせながら、九龍で何が起こっているのかを知っている。
だからこそ、令子を「特別な個体」として面白がっていたのではないか。そんな不気味な印象が拭えませんでした。
この世界の異質さ──そして、令子自身が「何者なのか」という根源的な問い。
第2話のカウンセリングシーンは、それらすべてを凝縮した、静かながら強烈な場面だったと思います。
まとめ
第2話では、令子の記憶喪失という大きな謎が本格的に動き出しました。
写真に映る「もうひとりの鯨井令子」、工藤の心に残る先輩との記憶、そして蛇沼先生から告げられた「あなたのシワには歴史がない」という衝撃的な診断──すべてが、令子の存在そのものを揺さぶる展開に繋がっています。
- 自分は何者なのか
- 過去は本当に存在したのか
- この世界は本当に現実なのか
そんな根源的な問いが、浮かび上がってきました。

単なる恋愛物語じゃないことは確実です
次回、令子はどのようにこの不可思議な世界と向き合うのでしょうか。
工藤に直接聞くという解決方法を取らないと決めた令子なので、今後は楊明と二人で謎を解いていくことになりそうです。(グエンに聞くのが手っ取り早かったのですが、彼はなぜか消えてしまった)