※本記事には『ゴッドオブブラックフィールド』第155話のネタバレが含まれます。未読の方はご注意ください。
前回、第154話では黒川のモンゴル出撃作戦をめぐり、恭弥とラノックの間に静かな対立が描かれました。
一方、今回の第155話ではその続きとして、黒川がついに恭弥に別れを告げ、ダエルは恭弥に「仲間としてのけじめ」を求める場面が展開されます。
アクション描写はなく、登場人物たちの「言葉」と「関係性」だけで物語が進む構成。
それゆえに、言葉の重みや沈黙の含意がこれまで以上に鋭く突き刺さる回となっていました。
見どころ1:黒川との別れ
尾行の気配を感じた恭弥が振り向くと、そこにいたのは黒川だった。そして彼の口から飛び出したのは、モンゴル作戦の出発が「明日」に決まったという事実だった。
- 黒川は「この国のために死ねるなら本望」と語る
- 脱出ルートはセレンガ川を経由してロシアへ、最終的にカザフスタンを目指すという過酷なもの
- そのルートの確保には、恭弥の裏での交渉(ラノックへの働きかけ)が役立っていた
- フランス情報局が動いたことを感謝され、恭弥はラノックへの態度を悔やむ
- 最後に、黒川は恭弥に向かって敬礼し、家族のもとへと去っていった
別れ際に西恭弥に敬礼をする黒川尚人
©Kakao piccoma Corp.

ラノックは支援にも限界があると言っていたが、それでも相当な支援をしてくれていた
私は、黒川の「死ねるなら本望」という発言に対して共感はできない。ただ、そうした思想を持つ人間が国家の中枢にいるというのは、理解できるし、それが今の黒川という人物の「信念」なのだろうとも思う。
また、「ユニコーンが成功すれば、誰も手出しできない国になる」という黒川の理想には、一種の政治的ロマンを感じる一方で、それに自分の命を差し出すという発想の危うさも否応なく滲み出ていた。

実際、この世界の日本はテロリストにやりたい放題されている
脱出ルートの確保が恭弥の働きかけのおかげだったと明かされる場面では、恭弥の中に「自分はラノックを信頼しきれていなかった」という微かな後悔が浮かぶ。
見どころ2:“知らせてください”──ダエルの抗議と、恭弥の軽口
スミセンからの誘いを受け、車内で合流した恭弥とダエル。
しかしその道中、話題はスミセンよりも「黒川の出発」に切り替わる。
恭弥はついに、黒川がモンゴルへ向かったことを打ち明けた。
- ダエルは「なぜ知らせてくれなかったのか」とはっきりと抗議
- 恭弥は軽く茶化しながら応じるも、最終的には「必ず知らせる」と誓う
- 「立場を入れ替えて考えてください」とのダエルの言葉が核心を突く
- 恭弥にとっては軽口でやり過ごしたい場面でも、ダエルにとっては大事な一線だった
ダエル「オレに何も言わないなんてひどいっすよ!…立場を入れ替えて考えてください!」
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ダエルの口調に怒気はない。だが、単なる部下としてではなく、一人の仲間として、信頼が裏切られた寂しさを込めた抗議だったように思う。
一方で、恭弥の返しは終始ふざけているように見えて、それもまた彼なりの“照れ隠し”だと感じた。本気で心配されたときほど、逆に冗談でごまかす。そういう癖が染み付いているようだ。
そのやり取りを通して、二人の間にある信頼関係の強さが目立った。これは単なる「戦友」ではなく、危険と責任を共有するパートナーとしての絆なのだろう。
恭弥が口にした「わかった、今後は必ず知らせる」という言葉は、約束というより、ようやく絞り出した答えのように聞こえた。
まとめ:ゴッドオブブラックフィールド:第155話
第155話では、黒川とダエルという対照的な二人との対話を通じて、恭弥の「誰にも頼られ、誰も失いたくない」という内面が静かににじみ出ていた。
黒川の死地に向かう覚悟に対し、ダエルは「知らせてくれ」と真っ直ぐに抗議する。恭弥はその両方に応えるように、感情を抑えつつも少しずつ誓いを重ねていく。
誰かの“最後”に立ち会いながら、誰かの“信頼”にも応えていく。会話だけで構成された一話だからこそ、関係性の深まりが際立つ回だったと感じた。
- 次回記事:156話:敵の盗聴に気づき、逆襲が始まる
- 前回記事:154話:ラノックの支援の限界と恭弥の覚悟
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