※本記事には『ゴッド・オブ・ブラックフィールド』第193話のネタバレが含まれます。未読の方はご注意ください。
前回の第192話では、恭弥が黒川との打ち合わせを通じて会場の警護計画を整理しました。その中で、C-4が搬入された可能性や、警備体制の準備不足が物語全体に緊張を与えていました。
今回の193話では、ついに会合当日の朝を迎えます。恭弥はフランス大使館に到着し、ラノックと合流して出発の準備を整えました。
この中でラノックが「もしもの場合、アンヌを頼む」と語った場面は、単なる形式的な依頼には見えませんでした。
また、恭弥の姿がテレビで中継され、それを見た人々がそれぞれに驚きや動揺を抱く描写が描かれます。
今回は、物語の緊張感が外側にも伝わりはじめたこと、そして恭弥という人物が「日常」と「非日常」の境界をまたぎ始めていることが、じわじわと表現されていたように思います。
アンヌを託された恭弥、ラノックの覚悟を感じ取る
朝、恭弥はフランス大使館を訪れます。そこでラノックは、彼に重たい一言を残しました。
ラノック『もし私の身に何かあった時は…アンヌのことをよろしく頼むよ』
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一見すると、これは「万が一」に備えた常識的な言いまわしに聞こえます。でも、その「もしも」の裏にある現実的な危機を想像すると、心がざわめかずにはいられませんでした。
この発言、形式的なあいさつではないと思います。恭弥が「大丈夫です」と言わず、「悪くありません」とやや距離を取った言い回しを選んだことにも、2人の関係にある緊張感が感じられました。

そして何より、ラノックが娘の行く末を託そうとしている相手は、まだ高校生という姿をした元傭兵です。その事実が、彼の中で「信頼と不安」の両方を抱えていることを物語っているように思えました。
このとき恭弥が問いかけます。「何かあるのでは?」それに対してラノックは、こう答えました。
ラノック『特に何かあるというわけではない。ただ・・・情報機関の会合は何が起きるかわからないからね』
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この返答を聞いて、恭弥は疑いを持ちます。けれど、彼は無理に問い詰めることはしませんでした。
代わりにこう考えます。
恭弥(何かを隠しているのは間違いなさそうだが…ラノックに話す気がない以上、聞いても無駄だな)
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相手を疑っているのに、それを表には出さない。この判断に、私はむしろ「人らしさ」を感じました。

信じているからこそ追及しないのか、それとも信じたいけれど躊躇しているのか…どちらにしても、恭弥の中で「今、聞いてはいけない」という判断があったのだと思います。
言葉に出さずとも相手の覚悟を受け止める。それは、かつて共に戦場をくぐり抜けてきた者どうしだからこそ、可能だったのかもしれません。
テレビ越しに映る恭弥の姿が周囲に与える衝
ユニコーン事業の発表会場へ向かうラノック。その護衛として、恭弥が彼と並んで入場する様子がテレビ中継されます。
現場からのアナウンサーの実況とともに、恭弥の存在が画面越しに映し出されると…
西花恋『あ…あなた!あ…あれ、恭弥じゃない!?』
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母としては当然、息子の活躍を誇らしく思っているはず。でも、まさか本当に「国際的な安全保障の最前線」に自分の子どもが立っているとは想像していなかったんでしょう。
その「えっ、本当に?」「まさか…」という驚きが、言葉のつっかえ方ににじんでいました。

もしかしたら、「もう親としてできることは何もないのかも」と、一瞬でも思ってしまったのかもしれません。
同じように、恭弥の同級生たちの反応も描かれました。学校の教室で中継を見ていた白井美紅は、画面の中の彼を見ながら、ぽつりと心の中でつぶやきます。
白井美紅(なんだか遠い人みたい…キョウ君は今、何を考えているんだろう?)
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このひと言には、ちょっと切ないものを感じました。「ずっと隣にいたはずの人が、気づいたらまるで別の世界にいるように思えた」という感覚。
美紅にとって恭弥は、同じ教室で過ごしてきた日常の一部。でもその彼が、テレビの向こうで、外交の最前線に立っている。

この違和感と寂しさは、親しければ親しいほど、強くなってしまうものなのかもしれません。
「手が届かない」とまでは思っていなくても、「もう背中しか見えない」――そんな距離感が伝わってくる場面でした。
まとめ:ゴッドオブブラックフィールド:第193話
今回のエピソードで、ラノックは恭弥に「アンヌのことを託す」と語りました。
この発言は、万が一の備えというよりも、明確な危機があることを知っているからこその行動のように映ります。
一方で、装備が限られていたことや護衛の人数制限は、情報戦の性質や外交上の駆け引きを浮かび上がらせていました。
テレビに映った恭弥の姿が、周囲の人間にとってこれまでの「高校生の彼」とは別の印象を与えていたことも、物語の転換点を示しているようです。
今後、情報機関の会合がどのように進むのか、またその裏でどんな衝突が起こるのか──次回の展開によって、ラノックや恭弥の判断が評価されるか、問われるかが分かれることになるかもしれません。
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