※本記事には『ゴッドオブブラックフィールド』第163話のネタバレが含まれます。未読の方はご注意ください。
今回は、戦闘前の張り詰めた空気が漂う第163話。
現地の猟師とのすれ違い、隊員たちの休憩、そして不穏な空気のまま進む黒川の描写。大きな戦いを前に、それぞれの立場で緊張が高まる構成となっていました。
この記事では、そんな第163話を2つの見どころに分けて振り返っていきます。
見どころ1:裏切りへの備えと、冷静な進軍判断を下す恭弥
アフリカでの作戦中に裏切られ命を落とした――そんな過去を思い出させる「火薬の匂い」が、恭弥の中で不穏な予感を呼び起こしていた。
それでも彼は「上等じゃねぇか」と吐き捨てるように、まるで挑戦を歓迎するかのような反応を見せる。

その言葉の裏には、かつては敗れたが今度はやらせないという、強烈な負けん気が滲んでいたように思う。
林の向こうから聞こえてきた話し声に警戒を強めるが、姿を現したのは武装した兵士ではなく現地の猟師たちだった。
「狩りを生業にする者は特殊部隊より優れた五感を持つ」と評価し、接触すれば口封じのために撃つしかないという現実的な選択肢まで冷静に想定する恭弥。
とはいえ実際には、彼らに気づかれず通過されるや否やすぐにルートを変更し、衝突そのものを避けた判断が光っていた。

私にはこの瞬間の判断力こそ、人命を奪わず、任務も損なわない。その両立を即断で選び取る感覚に唸りました。
- 火薬の匂い→過去のトラウマ→しかし覚悟を決めて前に進む
- 猟師との接触を避け、民間人への発砲を未然に防ぐためにルートを修正
- 「撃つしかない」と一度は思いつつ、それを回避する選択肢をすぐ実行
その後も、隊員たちにはしっかり昼食と休憩の時間を確保させる。
「戦闘糧食はまずい」とぼやくダエルに対し、恭弥は「食わねぇと力が出ねぇだろ」と一蹴する。味がどうこうではなく、「動く前に体力を確保する」ことを徹底する合理的な姿勢がそこにはあった。

本格的な戦闘に入る前のこの一連の行動から、恭弥の戦場指揮官としての冷静さと、無駄を嫌う機転の早さが垣間見えた場面だった。
見どころ2:隊員の多様性。黒川には窮地が迫る
敵の拠点まではあと数時間という地点で、恭弥は早めの進軍を決断する。
それは作戦開始を急ぐためではなく、「戦闘前にきちんと休む時間を確保する」ためだった。

焦って進めば、疲労と緊張で判断を誤る可能性が高まる――そんな戦場の現実を熟知した者だからこそ選べる方針だ。
この判断に対してジェラールは疑問を呈するが、恭弥は一切揺らがない。
むしろその会話のあとで、部隊にいる隊員たちの「階級別の特徴」まで俯瞰している描写が挿入されていたのが興味深い。
緊張を隠しきれない新入り、一人前ぶる若手、プライドの高い中堅、そして普段は軽口を叩きながら戦闘では頼れるベテラン――。

恭弥は全員の特徴を把握したうえで、「誰に何をさせるか」まで頭に描いているのだろう。
- 敵拠点に急ぐのではなく、先に着いて休むという「急がば回れ」の戦略
- 部隊内の人間関係と戦力構成を俯瞰する冷静さ
- 無駄な緊張や対立を避けつつ、的確に指示を飛ばす指揮力
一方その頃、拷問を受ける黒川尚人の描写が挿入されることで、緊張感は一気に高まる。
敵勢力に捕まり拷問を受けている黒川
©Kakao piccoma Corp.
吊るされたまま、名前も所属も語らず耐える姿には並々ならぬ覚悟が見えた。「一番耐えた人間でも4本まで」という拷問の説明も、語りすぎないからこそ凄まじい痛みが浮かび上がる。

私としては、黒川が生きていたことに安堵しつつも、時間との勝負が始まったことを強く意識させられました
恭弥たちは作戦を「正しく遂行」できるだろうか――それだけでなく、「間に合うかどうか」が問われる段階に入ってきたように思います。
まとめ:ゴッドオブブラックフィールド:第163話
第163話は、恭弥の冷静な指揮と判断力が際立つ一方で、黒川が極限状態にあることが明らかになる、緊張感に満ちた展開でした。
猟師との遭遇を回避し、休息の重要性を説く恭弥の動きには、過去の教訓を糧にした慎重さと柔軟さが表れていました。
さらに、隊員たちの個性を冷静に観察しながらも、必要な準備を抜かりなく進める姿からは、隊長としての器の広さと実戦経験の深さがにじんでいたように思います。
一方で、黒川の身に何が起きているのかが初めて明かされ、「急げば勝てる」ではなく「間に合わなければ終わる」という焦燥感が強く残る回でもありました。