※本記事には『ゴッド・オブ・ブラックフィールド』第203話のネタバレが含まれます。未読の方はご注意ください。
前回の202話では、ザビエが恭弥の病室を訪ね、「周防を捕まえて引き渡す」と持ちかけました。同時に、杉田未央の死が判明し、周防らの海外逃亡も明らかになりました。
今回の203話では、ザビエの提案の裏側やセルパン・ブニムーの内部の動きがさらに掘り下げられます。
また、白井美紅と椎名愛子が登場し、恭弥の私生活にも小さな波が立ちます。
見どころ1:ギャングが差し出す“周防の首”という交渉材料
国際テロの混乱がようやく落ち着いたころ、恭弥のもとを訪ねてきたのは、「セルパン・ブニムー」と呼ばれる裏社会の武装組織の男たちでした。
彼らのリーダー格であるザビエは、驚くべき提案を持ちかけます。
ザビエ『周防の子供はそれぞれフランスとアメリカにいる。そいつらを殺し、周防を誘き出して捕まえるつもりだ』
その内容は、簡単に言えば「家族を人質にして本丸を引きずり出す」というものです。倫理的には当然許されない手段ですが、敵の狙いと恭弥の目的が奇妙に一致しているのも事実でした。
恭弥はこれまで、理不尽な行為に対してははっきりと拒絶してきたはずです。

しかし今回は、そうしなかった。おそらくそれは、周防という存在の危険性を、彼自身が誰よりも理解しているからでしょう。もう「綺麗ごと」だけでは、通用しない段階にきているのだと思います。
また、ザビエの報告を受けたセルパン・ブニムーのボスは、「G・O・B(=恭弥)が今回の鍵だ」と明言していました。
さらに、「ラノックが唯一心を許しているのが恭弥だ」とも語っています。
この一言が示すように、恭弥というキャラクターは、もはや一高校生の姿をした傭兵ではなく、各国のパワーバランスに影響を与える存在に変わりつつあります。
見どころ2:癒しと混乱の病室、白井と愛子の遭遇
恭弥とダエルが病室で会話していたところに、同級生の白井美紅がお見舞いにきます。
彼女は模試を終えた後、帰り道に立ち寄ったようでした。なぜ、ここに須賀先生がいるのか不審がる白井に対して、恭弥とダエルは苦し紛れに言い訳を並び立てます。
恭弥『先生は運転が下手なんだ!体育教師なのに運動神経ゼロってヤバいよな?』
ダエルは、白井に事情を知られないよう「事故に遭った」という設定でその場をしのごうとします。しかし、ふたりの言い訳はどこかぎこちなく、それがかえって和やかな空気を作り出していました。
この場面の本質は、ダエルが病室を去った後の会話にありました。
白井が語るのは、学校のことや友達の話、進路や恋の話など、どれも日常の延長にある話題ばかりです。
それに対して恭弥は、ただ頷きながら耳を傾けます。
彼の置かれている現実(銃弾と作戦と裏切りに満ちた世界)とはあまりにもかけ離れていました。

しかし、そうした「何も起きていない会話」にこそ、恭弥は心をゆるめていたように見えます。彼は、ほんの一瞬だけ、自分がまだ「高校生」であることを思い出したのかもしれません。
病室の空気がふわりと変わり、ふたりの距離が近づいていきます。もし何もなければ、キスしていたのではないかと思えるほどの場面でした。
ですが、その空気を断ち切るように現れたのが、椎名愛子です。
彼女は芸能事務所DIファミリーに所属する人物ですが、このときは「仕事仲間」というより、まるで恋の場に踏み込んできたかのようでした。
白井が運んできたのは、素朴な日常と淡い気持ち。それに対して愛子の登場は、空気を一変させるものでした。
ふたりの間に別の種類の「緊張感」が生まれていたように思います。
まとめ:ゴッドオブブラックフィールド:第203話
203話では、ザビエから提示された「取引」に対して、恭弥が即答を避ける場面が印象に残りました。感情だけで動かず、状況を読もうとする姿勢に、彼の変化が見えてきます。
敵味方の区別が簡単につけられない構図も、今回のやりとりの中に潜んでいました。
一方で、白井と愛子という二人の女性が病室で顔を合わせたことで、普段とは異なる緊張感が生まれました。
また、ザビエは仲間に対して、裏切り者フィリップの始末を命じていました。この場面からは、セルパン・ブニムーも恭弥に黙って何か行動を起こそうとしているのだとうかがえます。
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