「その着せ替え人形は恋をする」14巻の感想
「その着せ替え人形は恋をする」14巻の感想を書いていきます。
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13巻:五条新菜の心情の答え合わせ
13巻(第99話)で、五条新菜の心情が意図的に黒塗りにされていて、何が書かれているかわかりませんでした。
14巻ではその心情部分の答えが描かれていて、答え合わせができるようになりました。まずは、13巻から振り返ってみましょう。
©福田晋一/SQUARE ENIX:13巻:第99話
引用画像の上部のセリフは「虜にさせるように振る舞って下さいなんて」と読み取れます。
一方、下部のセリフは黒塗りが多いため、内容を予測するのは難しいです。読み取れそうな部分は、前半の「虜にさせるように振る舞って」と後半の「言わなけれ」ぐらいでしょう。
この場面での新菜の表情や引用画像のセリフから、彼が「後悔」していることがうかがえます。
つまり、新菜は海夢に対して「虜にさせるように振る舞って下さいなんて言わなきゃよかった」と感じていると推測できます。
では、14巻(第107話)での答え合わせを見ていきましょう。
©福田晋一/SQUARE ENIX:14巻:第107話
新菜の心情について、内容はほぼ合っていましたが、彼自身はこの感情を「嫉妬」と表現していました。
新菜はこの感情をネガティブに捉えていた一方で、海夢は「焼きもち」とボジティブな言葉で表現し、作品の雰囲気を一気に明るくしています。
第99話から第107話にかけて、作品全体の雰囲気が暗くなっていく展開が続いていましたが、海夢の大喜びによって、再び元の明るい雰囲気が戻ってきました。
新菜と海夢の関係が恋人同士になるには、このような浮き沈みの展開が必要だったのかもしれません。
実際、この期間中の海夢は、普段の性格とは裏腹にネガティブな思考に陥り、一人で悩み込む様子が描かれていました。
五条新菜へ連鎖する3つの後押し
五条新菜が喜多川海夢に告白する決断をするのには、3つの後押しがありました。
まず、前提として新菜は「年末のコミケ」と「青柳のばらとの再会」によって、2つの悩みを抱えた状態になっています。
- 海夢への「嫉妬」
- のばらとの子どもの頃のトラウマ
新菜がどちらを主に悩んでいたかはわかりませんが「悩みが同時に襲ってきて考えがまとまらない」状態であることは確かです。(家でも、学校でもボーッとしている様子が描かれています。)
©福田晋一/SQUARE ENIX:14巻:第105話 家と学校でボーッとする新菜
最初に後押しする宇佐見さん
そんな新菜の悩みに耳を傾けてくれるのが、ユサワヤのベテラン店員「宇佐見」さんです。
このときの「相談内容」は省略されていますが、宇佐見さんの受け答えから新菜の話の中に「のばらとの過去」が含まれていることが推測できます。
宇佐見さんの教えは、よくある「やらない後悔よりやる後悔をしろ」というものではなく「あのとき父親にきちんと気持ちをぶつけるべきだった」という具体的な後悔に基づくものでした。
あきりたりな「やらない後悔よりやる後悔をしろ」という教えではなく。
「あのときちゃんと気持ちをぶつけるべきだった」という部分に焦点を当てている。
連鎖する後押し(喜多川海夢)
宇佐見さんの後悔を聞いた新菜は「自分の気持ちは 自分の為に言わなきゃダメだよ」という海夢の言葉を思い出します。(1巻の第1話)
新菜は二人の言葉に後押しされる形で、のばらに過去の話を切り出し、今でも雛人形がすごく好きなことを伝えます。
これに応える形でのばらも自分の気持ちを新菜に伝え、お互いの気持ちを理解し合うことができました。
・宇佐見・海夢の言葉で新菜が自分の気持ちを伝える行動を起こす。
・新菜の言葉によって、のばらも自分の気持ちを言えるようになる。
3人の後押しで告白する
のばらと気持ちをぶつけ合った新菜は、その日のうちに海夢に会いに行きます。
海夢から一時、強く拒絶された新菜は「理由を言うべきではない」と判断しますが、一瞬、宇佐見、のばら、海夢の言葉が脳裏によぎり、それが後押しとなって本心を話します。
©福田晋一/SQUARE ENIX:14巻:第107話 新菜の告白を後押しする3人
これがきっかけで、終始不機嫌だった海夢は一気に有頂天になリます。すべては新菜を後押ししてくれた3人の存在が大きかったのでしょう。
海夢の言葉が、めぐりめぐって本人に告白という形で還元されていく構造が面白かったです。
・宇佐見の後悔。
・宇佐見の言葉から海夢の言葉を思い出す。
・実際に長年苦しんでいたのばらを目の当たりにする。
「違うかな」と思った海夢
ハニエルのコスプレによって世間から高評価を得た喜多川海夢ですが、そちら(コスプレイヤー)の道に進む気はないようです。
- プロのコスプレイヤーとして活躍する。
- 今いる人たちと好きなコスプレをする。
これは新菜も同じです。コスプレ衣装が評価されている新菜ですが、彼の夢は頭師になることであり、衣装作りのプロを目指しているわけではありません。
予想される今後の葛藤
新菜と海夢が気づかないうちに、世間では「ハニエルのコスプレイヤーの正体」を探る動きが広がっています。
二人にはすでに、明確な幸せや目標があります。そんな彼らに、大人たちが「新しい道(コスプレイヤー)」を提案してくるのではないでしょうか。
大人たちの提案に対して「しっかり断る」のか、それとも「心が揺らぐのか」が今後の見どころになりそうです。
海夢はすでに「プロコスプレイヤー」の道には興味がないことを14巻で発言しています。
このため、もし悩むとすれば新菜の方ではないかと考えられます。
祖父の薫は、新菜に「たくさん経験しろ」と言っています。この言葉から、寄り道としてコスプレ衣装をプロとして作る可能性も十分に考えられるでしょう。
しかし、「おじいちゃんが元気なうちに一人前の頭師になる」という「制限時間」がこの作品にはあるため、そこで葛藤するかもしれません。
©福田晋一/SQUARE ENIX:14巻:第103話 頭師になるまでの制限時間がある
・道を決めている新菜と海夢に、別の道を示す大人が現れる。
・新菜と海夢がその提案に葛藤する。(特に新菜が悩むのではないか?)
アプローチしてくる人物の予想
必死に「ハニエルのコスプレイヤー(海夢)」を探しているのは編集者の妹尾なので、最初にアプローチしてくるのは彼になりそうです。
そこから溝上将護や司波刻央と接触する展開を期待しています。
新菜は「司波のキャラクターの作り方」と「おじいちゃんの雛人形の作り方」に共通点を感じており、もし会う機会があれば積極的に会いに行くのではないでしょうか。
©福田晋一/SQUARE ENIX:13巻:第96話 新菜が感じる二人の共通点
「新菜と司波の接触」も楽しみですが、私としては「五条薫と司波刻央が対面する場面」があったら嬉しいと感じます。二人がどのような会話をするのか、非常に興味深いです。
あとがき
14巻目にして主人公とヒロインが付き合い始めました。
これが恋愛漫画なら終わりが見え始める頃ですが、まだまだイベントはありそうです。そのため、「二人が恋人の状態でどのように問題に対処するのか」を見られるのは楽しみですね。
大人たちが「ハニエルのコスプレイヤー」を突き止めてアプローチしてくるのはほぼ確実のイベントでしょう。
他に考えられるイベントは「青柳のばらが恋敵になる」という展開もありそうです。
しかし、恋愛要素を増やすと話の主題がブレる可能性があるので、バランスが難しいでしょう。
「その着せ替え人形は恋をする」第14巻の感想は終わりとなります。
ではまたー!