「エイとマンタって、何が違うの?」
水族館や海の映像などでマンタを見て、「大きなエイのようだけど別の生き物なの?」と思ったことがある人もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、マンタはエイとは別の生き物ではなく、エイの仲間です。
ただし、私たちが普段「エイ」と聞いて思い浮かべるアカエイ類などとマンタを比べると、口の位置や食べ物、泳ぎ方、大きさなどには分かりやすい違いがあります。
この記事では、
- マンタはエイなのか
- エイとマンタはどう見分けるのか
- 口や食べ物はどう違うのか
- マンタにも毒針はあるのか
- なぜエイなのに「マンタ」と呼ばれるのか
などを順番に解説します。
エイとマンタの違いを簡単にいうと?
マンタはエイの仲間
マンタは、エイとはまったく別の生き物ではありません。
マンタもエイの仲間です。
沖縄美ら海水族館でも、ナンヨウマンタを「エイの仲間では最大級となる種類」と紹介しています。
そのため、「エイとマンタの違い」は、厳密には完全に別々のグループを比べているわけではありません。
イメージとしては、「犬と柴犬の違い」を尋ねるのに少し似ています。
柴犬も犬であるのと同じように、マンタもエイです。

この記事では分かりやすくするため、アカエイ類など一般に「エイ」としてイメージされやすい種類とマンタを比較していきます。
エイとマンタの主な違い
主な違いを簡単にまとめると、次のようになります。
| 比較する ポイント | 一般的なエイ | マンタ |
|---|---|---|
| 分類 | エイの仲間 | エイの仲間 |
| 口 | 腹側にある種類が多い | 頭の前方に大きく開く |
| 頭鰭 | アカエイ類などにはマンタのような目立つ頭鰭はない | 口の左右に一対の頭鰭がある |
| 食べ物 | 貝・甲殻類・小魚など種類によってさまざま | 主にプランクトンなど |
| 暮らし方 | 海底付近で生活する種類も多い | 水中を活発に遊泳する |
| トゲ | 鋭いトゲを持つ種類もいる | アカエイ類のように体外へ突出した鋭いトゲはない |
| 大きさ | 種類によって大きく異なる | エイの仲間でも最大級 |
多くのエイ類では口が体の下側にあり、海底の無脊椎動物や魚などを食べるのに適した形になっています。一方、マンタは頭の前方に幅広い口を持ち、その前には餌を口へ導く一対の頭鰭があります。
ただし、エイの仲間は非常に多様です。
たとえば、外洋を泳ぐカラスエイのようなエイもいるため、「エイはすべて海底生活、マンタだけが水中を泳ぐ」と単純に分けることはできません。
エイとマンタを見分ける3つのポイント
実際に水族館や写真などでマンタを見分けたい場合は、特に次の3つに注目すると分かりやすいでしょう。
- 口の位置
- 頭鰭(とうき)
- 大きな胸びれと泳ぐ姿

1.マンタは口が頭の前方にある
まず分かりやすいのが、口の位置です。
一般的なエイ類では口が体の腹側にあり、海底にいる餌を食べるのに適した形になっています。
一方、マンタには頭の前方に大きく開く口があります。その前には、一対の頭鰭があります。
マンタは泳ぎながら水と一緒にプランクトンなどを取り込み、餌を濾し取って食べます。
そのため、正面からマンタを見ることができれば、大きな口は非常に分かりやすい特徴です。
出典:
・米国フロリダ自然史博物館「Skate & Ray Biology」
・米国海洋大気庁(NOAA)「Giant Manta Ray」
2.マンタには口の左右に「頭鰭」がある
マンタを見分けるうえで特に特徴的なのが、頭鰭(とうき)です。
頭鰭とは、マンタの口の左右にある一対のヒレのことで、伸ばした状態では角のようにも見えます。
この頭鰭には、海水と餌を口の中へ導く役割があります。
マンタは餌を食べる際、頭鰭を広げることで、水と餌を口の中へ導きます。沖縄美ら海水族館でも、ナンヨウマンタが頭鰭を伸ばして餌を口へ流し込むようにして食べることが紹介されています。
つまり、
頭鰭で水と餌を口へ導く
↓
前方の大きな口から取り込む
↓
餌を濾し取って食べる
という仕組みです。
アカエイ類などにはマンタのような目立つ頭鰭がないため、水族館や写真で見分ける際の大きな手がかりになります。
出典:
・米国海洋大気庁(NOAA)「Giant Manta Ray」
・沖縄美ら海水族館「ナンヨウマンタ」
3.マンタは大きな胸びれで水中を泳ぐ
マンタは左右に大きく広がった、翼のような胸びれを持っています。
この大きく翼のように広がった胸びれも、マンタの特徴のひとつです。
一方、アカエイ類などには海底付近で生活し、砂の中に潜る種類も多くいます。
ただし、ここでも「泳いでいるからマンタ」と判断するのは早計です。
エイの中には、カラスエイのように外洋を泳ぐ種類もいます。
そのため、マンタを見分けるときは、
- 頭の前方に大きな口がある
- 口の左右に頭鰭がある
- 翼のような大きな胸びれを持つ
といった複数の特徴を見ると分かりやすいでしょう。
エイとマンタでは食べ物も違う?
エイとマンタでは、食べ物や食べ方にも違いがあります。
ただし、エイには多くの種類がいるため、「エイはすべて同じものを食べる」というわけではありません。
マンタの大きな特徴は、泳ぎながら水中の小さな生き物を濾し取って食べることです。
マンタはプランクトンなどを濾し取って食べる
マンタは巨大な体をしていますが、主な餌はプランクトンなどの小さな生き物です。
オニイトマキエイは、オキアミ類やカイアシ類などのプランクトン性生物を主に食べ、小魚を食べることもあります。
マンタは餌が集まっている場所を泳ぎながら、大きな口から水と一緒に餌を取り込みます。
そして、水の中から餌を濾し取って食べます。
このような食べ方を「濾過摂食(ろかせっしょく)」といいます。
沖縄美ら海水族館でも、ナンヨウマンタは大きな体をしていますが、主に小さなプランクトンを餌にすると紹介されています。
一般的なエイには貝や甲殻類などを食べる種類もいる
一方、海底付近で生活するエイには、貝やエビ、カニ、小魚などを食べる種類があります。
たとえばアメリカアカエイは、
- 二枚貝
- ゴカイ類
- エビ
- カニ
- 小魚
などを食べます。
こうした違いからも、
「マンタはエイとは別の食べ物を食べる生き物」
というより、
「マンタはエイの仲間の中でも、プランクトンなどを濾過摂食(ろかせっしょく)することに適応している」
と考えると分かりやすいでしょう。
マンタの大きな口と頭鰭は食べ方と関係している
マンタの特徴的な姿と食べ方には関係があります。
マンタは、
頭鰭(とうき)で水と餌を集める
↓
頭の前方にある大きな口から取り込む
↓
餌を濾し取る
という方法で食事をします。
つまり、マンタの大きな口や頭鰭は、単に見た目が特徴的なだけではありません。
小さな餌を効率よく食べるための体のつくりでもあるのです。

出典:
・米国海洋大気庁(NOAA)「Giant Manta Ray」
・沖縄美ら海水族館「ナンヨウマンタ」
・モントレーベイ水族館「Southern stingray」
マンタに毒針はある?
エイと聞くと、「尾に毒針がある」というイメージを持っている人も多いでしょう。
では、エイの仲間であるマンタにも同じような毒針があるのでしょうか。
結論からいうと、オニイトマキエイやナンヨウマンタには、アカエイ類などで見られるような体外へ突出した鋭いトゲはありません。
鋭いトゲを持つエイと持たないエイがいる
そもそも、すべてのエイが同じようなトゲを持っているわけではありません。
エイの仲間には、尾に鋭いトゲを持つ種類がいます。
たとえばアメリカアカエイには、尾の付け根に毒のある鋭い棘があります。
沖縄美ら海水族館でも、オグロオトメエイやヒョウモンオトメエイなど、鋭いトゲを持つエイを紹介しています。
そのため、「エイ=すべて毒針を持つ」わけではなく、種類によって異なると考えるのが適切です。
マンタにはアカエイのように突出したトゲはない
沖縄美ら海水族館によると、オニイトマキエイとナンヨウマンタでは、尾の付け根にトゲの痕跡自体は残っています。
しかし、それは非常に小さくなっており、体の外には突出していません。
そのため、
「エイには毒針があるが、マンタにはまったく存在しない」
と単純に分けるより、
「エイには鋭いトゲを持つ種類がいるが、マンタにはアカエイ類のように突出したトゲはない」
と考える方が正確です。
出典:
・沖縄美ら海水族館「マンタの尾ビレに『トゲ』はある??」
・モントレーベイ水族館「Southern stingray」
マンタは普通のエイよりどれくらい大きい?
マンタは、エイの仲間でも特に大型になります。
中でも大きいのがオニイトマキエイです。
沖縄美ら海水族館では、オニイトマキエイを「世界最大のエイ」と紹介しており、成長すると体の幅が約6mになります。
ナンヨウマンタも大型で、体幅は約4mに達します。

ここでいう体の幅とは、左右に大きく広がった胸びれの端から端までの幅です。
ただし、
「マンタはエイより大きい」
という表現は正確ではありません。
マンタ自身がエイだからです。
より正確には、マンタはエイの仲間の中でも最大級になるグループと考えると分かりやすいでしょう。
また、大きさだけでマンタを判断するのではなく、口の位置や頭鰭などもあわせて見ると見分けやすくなります。
マンタはエイなのに、なぜ「マンタ」と呼ばれている?
マンタはエイの仲間ですが、普段は単に「エイ」と呼ばれるより、「マンタ」という名前で呼ばれることが多い生き物です。
では、この「マンタ」という名前はどこから来たのでしょうか。
「マンタ」という名前はマントのような体形に由来する
沖縄美ら海水族館によると、「manta」はスペイン語でマントやオーバーコートなどを表す言葉です。
大きく横に広がった体がマントを思わせることから、「マンタ」と呼ばれるようになったと紹介されています。
マンタを上から見ると、左右に大きな胸びれが広がっており、大きな布やマントが水中を漂っているようにも見えます。
さらに、
- 頭の前方にある大きな口
- 口の左右にある頭鰭
- 大きな翼状の胸びれ
- プランクトンなどを濾し取る食べ方
といった特徴があり、アカエイ類などとは見た目の印象もかなり異なります。
ただし、こうした特徴があることと「マンタ」という名前が一般に定着した理由を、そのまま因果関係として結びつけることはできません。
確実にいえるのは、マンタという呼び名が、大きく広がった体形に由来する通称として使われているということです。
マンタには何種類いる?
マンタについて調べると、
「マンタには2種類いる」
という説明を見かけることがあります。
実際、これまでは主に、
- オニイトマキエイ(Mobula birostris)
- ナンヨウマンタ(Mobula alfredi)
の2種がマンタとして紹介されてきました。沖縄美ら海水族館の従来の解説でも、この2種を通称「マンタ」としています。
しかし、2025年に大西洋に生息する別のマンタが新種として正式に記載されました。
2025年に第3のマンタ種「Mobula yarae(モブラ・ヤラエ)」が正式記載された
2025年7月23日、学術誌『Environmental Biology of Fishes』に、大西洋のマンタに関する新しい分類学的研究が発表されました。
研究では、西大西洋の個体について、
- 体の形や模様などの形態的特徴
- ミトコンドリアDNA
- 核DNA
などを調べています。
その結果、オニイトマキエイやナンヨウマンタに近縁ではあるものの、独立した系統を持つ新しいマンタ種として正式記載されました。
学名は、
Mobula yarae
です。
WoRMS(World Register of Marine Species)にも、Mobula yarae Bucair & Marshall, 2025 として登録されています。
2025年の原著論文によると、これまでのところ Mobula yarae は大西洋で記録されています。
そのため、現在マンタについて説明する場合は、
- オニイトマキエイ(Mobula birostris)
- ナンヨウマンタ(Mobula alfredi)
- Mobula yarae
という3種を考慮する必要があります。
Mobula yarae は2025年に正式記載されたばかりの種です。
そのため、情報の更新時期によっては、現在も「マンタは2種類」と説明されている場合があります。
実際、2026年1月に更新された米国海洋大気庁(NOAA)の一般向けページでも、マンタを2種と説明しています。
この記事では、2025年の原著論文と現在のWoRMSの登録を踏まえ、Mobula yarae を第3のマンタ種として扱っています。
なお、Mobula yarae の日本語の標準和名は、今回確認した信頼性の高い資料からは確認できなかったため、本記事では初出時に「モブラ・ヤラエ」と読みを併記し、それ以降は学名で表記しています。
出典:
・原著論文(Bucair et al., 2025 / Environmental Biology of Fishes)
・海洋生物データベース WoRMS「Mobula 属の分類一覧」
・米国海洋大気庁(NOAA)「Giant Manta Ray」
・沖縄美ら海水族館「世界マンタデー」
エイとマンタの違いまとめ
エイとマンタは、まったく別の生き物ではありません。
マンタもエイの仲間です。
一般的にイメージされるアカエイ類などと比べると、マンタには、
- 頭の前方に大きな口がある
- 口の左右に頭鰭がある
- 主にプランクトンなどを濾し取って食べる
- 翼のような大きな胸びれを持つ
- アカエイ類のように突出した鋭いトゲがない
- エイの仲間でも最大級になる
といった特徴があります。
水族館や写真などでマンタを見分けたい場合は、特に、
「頭の前方にある大きな口」
「口の左右にある頭鰭」
「翼のように大きく広がった胸びれ」
の3点を見ると分かりやすいでしょう。
一方で、エイの仲間は非常に多様なので、
「エイは海底にいて毒針を持つ、マンタは水中を泳いで毒針を持たない」
と単純に二分することはできません。
「マンタはエイなの?」という疑問への答えは、「はい」です。
そのうえで、マンタは多様なエイの仲間の中でも、大きな体や頭鰭、前向きの口、濾過摂食などの特徴を持つグループと考えると、違いを理解しやすくなります。

