「資料をさくせいする」「模型をさくせいする」と書くとき、「作成」と「作製」のどちらを使うべきか迷うことがあります。読み方は同じですが、使われる対象には一定の傾向があります。
簡単にいうと、計画・書類・文章などを作るときは「作成」、物品や図面などを作るときは「作製」が基本です。ただし、両者の境界は完全に決まっているわけではありません。
この記事では、作成と作製の違いを具体例とともに整理し、迷ったときの考え方も紹介します。
作成と作製の違いを簡単にいうと
作成と作製の基本的な違いは、次のように整理できます。
| 表記 | 主に作るもの | 代表例 |
|---|---|---|
| 作成 | 計画・書類・文章など | 計画書、報告書、資料 |
| 作製 | 物品・図面など | 模型、試作品、設計図 |

小学館『デジタル大辞泉』では、「作成」を計画・書類・文章などを作ること、「作製」を物品や図面などを作ることと説明しています。
大まかには、計画・書類・文章などなら「作成」、物品や図面などなら「作製」と考えると判断しやすいでしょう。
ただし、『精選版 日本国語大辞典』では、物品には「作製」、書類や計画には「作成」といわれる一方、使い分けは必ずしも明らかではないとされています。
基本的な目安はありますが、「この場合は必ずこちら」と完全に分けられるわけではなく、文脈や慣用によって表記が変わる場合があります。
出典:
コトバンク「作成」(小学館『デジタル大辞泉』『精選版 日本国語大辞典』掲載)
コトバンク「作製」(小学館『デジタル大辞泉』掲載)
作成と作製の使い分けを具体例で確認
二語を使い分けるときは、単純に「形があるか」だけで判断するのではなく、何を作っているのかを見ることが大切です。
資料・書類などは「作成」が基本
資料、書類、文章、計画などには、基本的に「作成」を使います。
- 会議の資料を作成する
- 申請書類を作成する
- 旅行の計画を作成する
- 報告書を作成する
紙に印刷すれば形のある物になりますが、作っている中心は紙そのものではなく、そこに記す情報や内容です。
そのため、「資料を作製する」より「資料を作成する」の方が一般的です。
プログラムやデータについても、「作成」という表記が実際に使われています。
例えば、農研機構では、「プログラムを作成」「データを作成」という表現が使われています。
出典:農研機構「メッシュ農業気象データの相対湿度を作成するプログラム」
図面・模型などでは「作製」が使われる
物品や模型、試作品などでは、「作製」が使われます。
- 実験用の装置を作製する
- 建築模型を作製する
- 試作品を作製する
- 設計図を作製する
図面は情報を表すものですが、『デジタル大辞泉』では「作製」の対象に図面も含め、「設計図を作製する」という例が挙げられています。
そのため、「形のない情報なら必ず作成」とは限りません。
模型についても、学術資料では「作製」という表記が実際に使われています。
例えば、日本デジタル歯科学会誌の3Dプリンターを用いた模型歯の研究では、模型について「作製」という表現が使われています。
出典:日本デジタル歯科学会誌「3Dプリンターを用いた模型歯の研究」
ポスターは「作成」「作製」の両方の用例がある
ポスターは、「作成」と「作製」のどちらも実際に使われているため、一律に決めにくい例です。
環境省北海道地方環境事務所では、「野生生物への餌付け防止ポスターを作成しました」と表記されています。
一方、獨協医科大学病院のポスター印刷に関する案内では、「ポスター作製」という表記が使われています。
このように、同じ「ポスター」でも両方の用例があります。
そのため、「ポスターなら必ず作成」「印刷物なら必ず作製」といった分け方はできません。
組織や分野で表記が決まっている場合は、それに合わせるのがよいでしょう。
特に決まりがなく、どちらを使っても不自然に感じる場合は、単に「ポスターを作る」と表現する方法もあります。
出典:
環境省北海道地方環境事務所「野生生物への餌付け防止ポスターを作成しました」
獨協医科大学病院 画像資料室「ポスター印刷に関するFAQ」
食べ物は「作る」「調理する」が自然
料理や食べ物の場合は、「作成」か「作製」かを無理に選ぶ必要はありません。
一般的な文章なら、
- 家庭で料理を作る
- 食材を調理する
- 工場で菓子を製造する
といった表現の方が自然です。
小学館『デジタル大辞泉』でも、「作る」の用例として「料理を作る」が挙げられています。
また、原料に手を加えて製品を作る場合には、「製造」という言葉があります。
「作成」と「作製」だけで考えず、その対象に合った別の言葉を選ぶことも大切です。
出典:
コトバンク「作る」(小学館『デジタル大辞泉』掲載)
コトバンク「製造」(小学館『デジタル大辞泉』掲載)
「形がある・ない」だけでは決められない
作成と作製の違いは、「形がないものは作成、形があるものは作製」と説明されることがあります。
初心者が違いを覚えるための目安にはなりますが、これだけですべてを判断することはできません。
例えば、書類は紙に印刷すれば形がありますが、一般には「書類を作成する」といいます。
反対に、図面は情報を表すものですが、辞書には「設計図を作製する」という例があります。
さらに、『精選版 日本国語大辞典』が示すように、二語の使い分けは必ずしも明確ではありません。
そのため、対象が形のある物かどうかだけで機械的に決めず、一般的な言い方や文章の文脈も確認する必要があります。
迷ったときの判断方法
作成と作製で迷ったときは、次の順序で考えると判断しやすくなります。
- 計画・書類・文章などをまとめるなら「作成」を第一候補にする。
- 物品・装置・模型・図面などを作るなら「作製」を第一候補にする。
- どちらの用例もある対象では、組織内の表記や、その分野で一般的な言い方に合わせる。

それでも不自然に感じる場合は、「作る」「まとめる」「設計する」「調理する」など、意味が明確な別の言葉へ置き換える方法もあります。
制作・製作との違いも簡単に整理
「作成」「作製」と似た言葉に、「制作」と「製作」があります。
代表的な使われ方を整理すると、次のとおりです。
| 表記 | 主な使われ方 | 代表例 |
|---|---|---|
| 作成 | 計画・書類・文章などを作る | 報告書を作成する |
| 作製 | 物品・図面などを作る | 模型を作製する |
| 制作 | 芸術作品などを作る | 絵画を制作する |
| 製作 | 品物などを作る | 家具を製作する |
※表は代表的な使われ方をまとめたものです。「制作」「製作」にも意味が重なる部分があります。
小学館『デジタル大辞泉』では、「制作」について芸術作品などを作る意味が示され、「製作」には道具や機械などを使って品物を作る意味があります。
「作製」と「製作」も意味の近い言葉です。
そのため、「少量なら作製、大量なら製作」のような単純なルールで常に分けられるわけではありません。
まずは、書類や計画なら「作成」、物品や図面なら「作製」という今回の基本的な違いを押さえておけば十分です。
出典:
コトバンク「制作」(小学館『デジタル大辞泉』掲載)
コトバンク「製作」(小学館『デジタル大辞泉』掲載)
作成と作製の違いのまとめ
- 「作成」は、主に計画・書類・文章などを作るときに使う。
- 「作製」は、主に物品や図面などを作るときに使う。
- 「形があるか、ないか」だけでは完全に分けられない。
- ポスターのように両方の用例があるものは、文脈や慣用に合わせる。
- 食べ物などでは、「作る」「調理する」のような別の言葉が自然な場合もある。
作成と作製で迷ったら、まず「何を作っているのか」を確認してみましょう。
そのうえで一般的な用例や文脈を見ると、より自然な表記を選びやすくなります。

