『リターン~ある外科医の逆襲~』147、148話の見どころ・ネタバレ
1.上府の婢を救った話
外伝となる147話『リターン~ある外科医の逆襲~』の1話目より更に前、『上府の婢とその兄』が下府(人間界)に降りてきたときの話である。
下府は技術が発展する一方で自己中心的な悪人が目立つようになってきていた。『それでも善人はいるはずだ』と考えた上府の婢は下府に降り立って、実際にこの目で確かめようとしていた。
そこで上府の婢たちは、刃物を振り回す危険人物と遭遇する。このままでは誰かが犠牲になると考えた2人は身を挺して危険人物を止めるも、重傷を負ってしまう。
大日病院に運ばれた2人だが、身元不明ということで手術を拒否されそうになる。そんな中、周りの反対を押し切って五十嵐徹が上府の婢たちを手術するのであった。
©Kakao piccoma Corp.:人間の体で下府に降り立った上府の婢
本編では言葉でしか語られなかった「前世の徹が上府の婢とその兄を救った」話である。これがきっかけで上府の婢に認められた徹は転生して人生をもう一度やり直すことになる。
転生後でもあった話だが「身元不明の患者を全責任を持って手術する」というのは前世でもやっていたことだとわかる。五十嵐徹の精神性はこの頃から変わっていないということだろう。
2.美穂が医者を目指した理由
外伝148話では前話と打って変わって後日談のような話になる。息子の功補が医者となるべく勉強していること、そして美穂がなぜ医者を志したかの理由についてだった。
学生時代の美穂は父親から強制的に医者にさせられることに疑問を持っていた。兄の智章に相談すると「立派な医者になりたい」というキーワードを美穂は得る。
大日病院に居た美穂は、そこで「父親のガンを見抜いた高校生」がいることを知る。その高校生の後ろ姿を見た美穂は「この人は自分の意志でこの道(医者)に進むはず」だと想像する。
美穂はその高校生の名前が「徹」だと知って、どこかでまた会えれば良いと考えるのであった。
©Kakao piccoma Corp.:高校生でありながら父親のガンを見抜いた五十嵐徹
徹の第二の人生では色々な人たちに影響を与えている。今回の話の美穂もそうだが、中学時代の友人の正樹にも影響を与え、彼を医者の道に進めている。
『リターン~ある外科医の逆襲~』147、148話の感想・考察
この外伝2話をもって『リターン~ある外科医の逆襲~』は完全に完結となる。外伝では、リターンの前日談と後日談の2話となった。
上府の婢の未来視で、徹の未来がわかり、その上でこの人は救われるべき人間だと判断して手を差し伸べたとわかる。良くも悪くも徹の転生によって、色々な人の人生が全く違った形になった。
悲しいところは前世の春馬でも、対して成功している風には見えなかったところだろうか。徹の邪魔が入らなかった世界で、春馬の「父親への復讐」が成功したのかどうかは気になる部分だ。
息子の功補が学生時代から純粋に医者を目指すというのは、この作品では珍しいキャラクターとなる。五十嵐徹ですら最初はお金のために医者になろうとしていた。
徹のような患者のことを第一に考える医者の思いが、息子に継承されていくというのは良いシーンであった。